スプリングバンク 21年 2025 Edition

1990年代に“伝説の21年”として語られたスプリングバンクが、2012年以降「年1回・極少量」の形で復活し、いまや世界的に争奪戦となっているのがこの Springbank 21。スプリングバンクの魅力は、単に熟成が長いから上質、ではありません。**蒸留所の作りのクセ（＝設計思想）**が、長期熟成でむしろ立体的に浮かび上がる──その点にこのボトルの価値があります。

2025 Editionの核：4種の樽の“調和”

本エディションは、Port / Bourbon / Rum / Sherry の4樽をブレンド（バッティング）して設計されています。公式情報でも、2025 Editionは 46% ABV、樽比率は 65% Port / 25% Bourbon / 5% Rum / 5% Sherry と明記されています。
ポート樽の赤黒い果実感に、バーボン樽のバニラ～蜂蜜の芯、ラム樽の糖蜜の厚み、シェリー樽のナッティさとスパイスが“少量で効く”ように配置されているのがポイント。比率を見るだけで、主役がポートであること、しかし甘さ一辺倒に倒さず、骨格をバーボンで支え、余韻にラムとシェリーで陰影を足す狙いが読み取れます。

テイスティング（香り・味わいの読み解き）

公式テイスティングでは、ノーズに Medjool dates / sticky toffee pudding / treacle / stewed plums / blood orange zest、背景に繊細なピートスモークが示されています。 
ここで重要なのは「ポート樽＝ベリー」だけで終わらない点です。プラムやブラッドオレンジの“皮”のニュアンス、糖蜜、そして奥から出るピートの乾いた煙が、甘さを香りの層に変換する。飲み口は、スプリングバンクらしい潮気・オイリーさが下支えし、甘やかさの後に渋み／ほろ苦さ／スパイスが戻ってくる設計。結果として、デザート的に甘いのではなく「複雑さとして甘い」タイプに着地します。

なぜスプリングバンクは“味の情報量”が違うのか

スプリングバンクは、いわゆる効率重視の現代型ではなく、工程そのものが味に直結する蒸留所です。

2.5回蒸留という“中間解”

スプリングバンクは two-and-a-half times（2.5回）蒸留。ロングロウ（2回）やヘーゼルバーン（3回）と同設備で、蒸留回数の設計を変えることで酒質を作り分けています。
2回蒸留の力強さと、3回蒸留の軽やかさの“いいとこ取り”を狙う一方で、酒質は均一化せず、重さ・香り・ミネラル感が同居しやすい。だから長期熟成にしても「ただ丸くなる」より、要素が増えていく方向に伸びます。

直火加熱（live flame）が生むニュアンス

公式プロセスでも、洗浄液を蒸留するウォッシュスチルが **live flame（直火）**で加熱される点が強調されています。
直火は温度の立ち上がりが鋭く、香味に“焼き”のニュアンスや厚みが出やすい。スプリングバンクでしばしば感じる、トースト、糖蜜、ほろ苦いカラメルの気配は、この作りと相性が良い領域です。

キャンベルタウンという土地の文脈

スプリングバンクのホームであるキャンベルタウンは、歴史的にウイスキーの中心地だった地域。蒸留所のストーリーにも、キャンベルタウンが古くからウイスキーと深く結びついてきた経緯が示されています。 
この地域の“潮気・港の倉庫感”を思わせる要素が、ポート樽のフルーティさとぶつからず、むしろ複雑さとして共存するのが21年の面白さです。

スペック

• 種別：シングルモルト（Campbeltown）

• 容量：700ml

• 度数：46%

• 樽構成：Port 65% / Bourbon 25% / Sherry 5% / Rum 5%

• 本数：限定（資料記載）

飲み方

• まずストレート：香りの層（ドライフルーツ→糖蜜→柑橘ピール→ピート）を確認

• 加水は数滴から：46%はバランスが良い反面、加水しすぎるとポート由来の甘さが前に出て設計が単純化しやすい

• グラスは口径がすぼまるタイプ：香りが分離せず、ピートと果実が一体で立ち上がります

こんな方に刺さります

• “シェリー一択”でも“ピート一択”でもない、樽の設計で魅せる長期熟成を飲みたい

• スプリングバンクの人気の理由を、噂ではなく味で理解したい

• ポート樽の甘さが好きだが、甘いだけのウイスキーは飽きる

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